経営分析とは何か/経営分析講座

ここでは、はじめて会計を学ぶ人のために「決算書」と「経営分析」の基本について、クイック講座として、紹介してきます。

 経営分析講座編

経営分析とは何か

決算書を詳しく知るのが、経営分析

ビジネスの世界では、「決算書を作成できる人は多いが、決算書を読める人は少ない」とよく言われます。ここでいう「決算書を読める」とは、「経営分析ができる」という意味です。

経営分析は、「経営危機に対する予防接種」になります。経営分析には、数多くの分析方法がありますが、このHPでは、基本的で実践的なものに絞って紹介していきます。まずは、損益計算書からみていきましょう。

損益計算書を使った経営分析を知る

損益計算書をつかった経営分析の初歩

 年度ごとの推移で会社の業績をみる

 まずは、損益計算書を使った経営分析からです。損益計算書によって、会社の営業成績を知ることができます。                                                          A社の2期分の損益計算書はつぎのとおり。

科目/年度 ×1年 ×2年
売上高 100,000 200,000
売上原価 70,000 180,000
売上総利益 30,000 20,000
販売管理費及び一般管理費 25,000 30,000
営業利益 5,000 ▲10,000

 

 A社の売上高は、×1年の100,000円が、×2年には200,000円と倍増しています。しかし、営業利益に着眼すると×1年に5,000円の黒字から一転して、△10,000円の赤字に転落しています。売上が順調に伸びているのにもかかわらず、営業利益は赤字になったわけです。これは、どういう理由(わけ)でしょうか。

 

・「売上原価率」を分析する

 モノを売るためには、モノを仕入れなければなりません。

売上高に対する仕入金額のことを売上原価といいます。

売上原価率の分析は、「売上と仕入の比率を知ること」と考えてください。

売上原価率は、つぎのような計算式で求められます。

 

  売上原価率(%)= 売上原価÷売上高

  A社の売上原価率は、つぎのとおりになります。

分析/年度 ×1年 ×2年
売上原価率 70% 90%

 

参考 ×1年の計算式 70,000÷100,00070

A社の売上原価率が、上昇していることがわかります。つまり、利益が出にくい状態になっています。

 

「売上総利益に占める販売費及び一般管理費を分析する

 

販売費及び一般管理費(販管費)は、会社の諸経費になります。

販管費は、売上総利益の範囲内で、支払うのが、基本です。

売上総利益に占める販管費率は、つぎのような計算式で求められます。

 

  売上総利益に占める販管費率(%)=販管費÷売上総利益 

 

A社の売上総利益に占める販管費率の推移は、つぎのとおりになります。

分析/年度 ×1年 ×2年
売上総利益に占める販管費率

83%

150%

 

  参考 ×1年の計算式 25,000÷30,00083

 

 

A社は前年比で、販管費が急増していることがわかります。

A社は、売上高の順調な伸びとは裏腹に経営危機に直面しています。売上原価率、販管費率の上昇によって、利益を確保しにくい経営体質になっているからです。

                                 

貸借対照表を使った経営分析を知る

貸借対照表を使った経営分析の初歩

 つぎに、貸借対照表を使った経営分析です。貸借対照表によって、会社の財務基盤を知ることができます。経営分析です。

 B社の2年分の貸借対照表の主要データは、つぎのとおり。

 

科目/年度 ×1年 ×2年
資産 800,000 500,000
負債 600,000 100,000
純資産 200,000 400,000

  

B社の資産は、×1年の800,000円が、×2年には500,000円となっています。資産が少なくなっています。しかし、同時に負債も減少しています。×1年に600,000円だったものが、×2年には、100,000円となっています。

 

「資産に占める負債比率」を分析する

 資産に占める負債比率(%)=負債÷資産 

 

B社の資産に占める負債比率は、つぎのとおりです。

 

分析/年度 ×1年 ×2年
資産に占める負債比率 75% 50%

 

※ 参考 ×1年の計算式 600,000÷800,00075%

 

B社は、順調に借金を返済しており、資産に占める負債比率が×1年の75%から×2年には、50%と大きく減少しています。

 

B社は、前年比で、資産が減少し財産が悪化しているように見えますが、実は、順調な借金の返済により、自己資金が充実・健全な財務体質になっていたことがわかります。 

 

支払能力と資金力を知る

 

・支払能力は、「流動比率」でわかる

 

お金のない会社にモノを売れば、代金を回収することができません。

このため、取引先に十分なお金があるか、すなわち、十分な支払能力があるかどうかを知ることは、大変重要です。

 会社の支払能力を知る代表的な経営分析が「流動比率」です。流動比率の計算式は、つぎのとおりです。

 

 流動比率(%)= 流動資産÷流動負債

 

流動資産は、すぐに現金にできる資産です。

つぎのような資産になります。

 現金・預金、受取手形、売掛金、棚卸資産、有価証券など

これに対して流動負債は、すぐに支払うべき借金です。

 買掛金、支払手形、短期借入金など

この「流動資産」と「流動負債」を比較すれば、支払能力が「十分なのか」あるいは「不足しているのか」を知ることができます。つまり、流動比率から手元資金の充実度がわかるのです。流動比率の数字は大きいほど、支払能力が充実していることになります。反対に小さければ、不足していることを意味します。

 一般的に流動比率は、200%以上が望ましいと説明されます。しかし、日本の企業においては、130%~150%が、現実的な数字といえるでしょう。

 

・資金力は、「自己資本比率」でわかる

 

会社の資金が、潤沢かどうかで、経営の選択肢が広がったり、狭くなったりします。自己資金が十分にあれば、さまざまな事業に積極的に挑戦することができます。反対に自己資金が不足している場合は、銀行などから資金援助を受けなければなりません。

会社の資金力は自己資本比率でわかります。自己資本とは、「純資産」のことです。

 

自己資本比率の計算式は、つぎにとおりです。

 

自己資本比率(%)= 自己資本÷総資本

 

 自己資金比率は、各業界によって特色があります。全業種の平均値は30%程度です。

 

利益率で、会社の儲けを知る

 

・儲(もう)利益率でわかる

 

会社が、どのくらい儲かっているか。

それを知るのが利益率です。売上高が大きい会社は、利益率が大きく、小さい会社は利益率が小さいわけではありません。売上高の小さい会社が、利益率が大きく、大きい会社が、利益率が小さいことは、ビジネスの世界ではよくあることです。

会社の儲けは、「利益率」によってわかります。

ここでは、「売上高総利益率」と「売上高営業利益率」という代表的な2つの利益率を紹介します。

 

・売上高総利益率とは何か

 

売上高総利益率の計算式は、つぎのとおりです。

 

売上高総利益率(%)= 売上総利益÷売上高

 

売上総利益は、会社のもっとも基本となる利益です。売上高総利益率が大きいほど、会社の基本となる利益をたくさん稼いでいることになります。

 

・売上高営業利益率とは何か

 

売上高営業利益率の計算式は、つぎのとおりです。

 

売上高営業利益(%)= 営業利益÷売上高

 

営業利益とは、営業力によって稼いだ利益です。

この利益率が大きいほど、会社の営業成績が良いことを意味します。

 

売上高総利益率と売上高営業利益率は、各業界によって、大きな特色があります。まず、自社の業種を確認し、比較分析する必要があります。

 

 売上高総利益率が、大きい業界は、「不動産」・「飲食・宿泊」「サービス」となり、いずれも65%くらいとなります。逆に小さいのは「建設」・「卸売」で20%くらいとなっています。

 一方、売上高営業利益率は、ダントツで大きいのが、「不動産」です。7%を確保しています。これに対して、もっとも小さいのが「小売」の0.2%と1%を下回っています。不動産は、商取引が少ない分、大きな利益率を確保しているようです。これに対して小売は、小さい利益率でより多くの商取引をおこなっていることがわかります。

 

 

人件費を考える

 

人件費を労働分配率で考える

 

・付加価値と人件費とは何か 

 

人件費を知るには、まず、「付加価値」と「人件費」の2つを理解する必要があります。

「付加価値」とは、会社が「(つ)(く)えた価値(かち)」のことです。

具体的にみていきましょう。

 

[] 商品を1,000円で仕入れ、1,200円で売った。

この例は、「1,000円で仕入れた商品に会社が新たに200円の価値を付け加えて1,200円で売った」と考えることができます。

つまり、仕入商品1,000円+付加価値200円=売価1,200

と考えるのです。「付加価値」とは、「売上総利益」とほぼ同じと考えて下さい。

 

  付加価値=売上総利益

 

つぎに人件費を見ていきましょう。人件費は、社員に支払うお給料のほか、会社が負担する社会保険料や雇用保険料の「法定福利費」。さらに社員旅行などの「厚生費」を加えた総額になります。すなわち、社員が、働きやすくするための諸費用を「人件費」と考えるわけです。             

人件費=お給料・法定福利費・厚生費など

 

・労働分配率とは何か

 

労働分配率とは、「付加価値」に占める「人件費」割合です。

労働分配率の計算式は、つぎのとおりです。

 

労働分配率(%)= 人件費÷付加価値

 

具体的にみていきましょう。 

A社のデータは、以下のとおり。 

                (単位:百万円)

売上総利益  20,000   給 与    8,000

法定福利費    1,200   厚生費     400

 

 

人件費の総額は、給与・法定福利費・厚生費をすべて加えた総額ですから、つぎのようになります。

人件費総額9,6008,0001,200400

したがって、人件費総額は9,600円になります。

 

繰り返しになりますが、売上総利益と付加価値は、ほぼ同じと考えてください。このため、A社の付加価値は、20,000円となります。

A社の労働分配率はつぎのようになります。  

     

労働分配率 48(%)=9,600÷20,000

 

 日本の労働分配率は、どの業界も70%~75%程度です。ところで、人件費を「将来への投資」と考える経営者もいます。投資ですから、ある程度のリスクはつきものです。今はまだ、利益稼いでいない社員にもお給料という人件費を投資することで、将来は、会社に大きな利益をもたらす、という経営者側の判断です。労働分配率の見方は経営者の考え方が、複眼的にわかるデリケートな数値といえます。

 

採算性を考える

 

 

採算性は「損益分岐点」でわかる

 

採算性を知ることは、利益がプラスでもマイナスでもない、ちょうど利益がゼロの売上高を知ることです。

この「利益ゼロの売上高」のことを損益分岐点売上高といいます。

損益分岐点売上高を知ることで、利益を確保するために売上なければならない金額を知ることができます。

 

・定期券で採算性を考える

バスで通勤する人の多くは、「定期券」を購入するはずです。

この定期券の例をつかって、採算性を考えてみましょう。

 

[]  Aさんは、1ヶ月の定期代が、20,000円。

1日の往復のキップ代が1,000円。出勤日数 22

 

Aさんは、定期券を購入した方がトクでしょうか。それとも毎日キップを購入した方がトクなのでしょうか。

 

(回答)  20,000円÷1,000円=20

 

20日以上、バスを利用するなら、定期券購入の採算性がとれます。つまり、トクです。19日間の利用なら、19日×1,000円=19,000円となり、定期券を購入するよりも、毎日、乗車のたびにキップを購入した方が、割安です。このため、毎月22日以上の出勤日のあるAさんは、定期券を購入するとトクなわけです。

 

・変動費・固定費・変動費率とは何か

 

会社の採算性を知るには、つぎの3つの知識が必要になります。

変動費」「固定費」「変動費率」の3つです。

変動費とは、売上高に比例して増えたり減ったりする費用です。

仕入商品などが代表的な例です。売上が増えるほど、仕入商品も増えるからです。

 

・変動費(円)=売上に比例して増減する費用

 

固定費とは、売上高に関係なく発生する費用のことです。

人件費が代表的なものです。社員のお給料は売上高に関係なく支払うものです。その他、販売費や一般管理費も固定費と考えてください。

 

 ・固定費(円)=売上に関係なく発生する費用

 

 最後に変動費率です。

変動費率は、変動費を売上高で割ったものです。

計算式はつぎのとおりです。

 

 

変動費率(%)= 変動費÷売上高

 

 

これら3つの知識をつかって、損益分岐点売上高は求められます。

損益分岐点売上高の計算式は、つぎのとおりです。

 

 

損益分岐点売上高(円)= ×100

 

 

つぎに具体的に採算性を計算してみましょう。

B社のデータは、つぎのとおり。損益分岐点売上高はいくらか。

 

 

B社のデータ    (単位:百万円)

 

売上高 6,000   仕入高 3,600

固定費 1,600 

 

B社の損益分岐点売上高は、以下のようになります。まず、変動費率をもとめます。

 

 変動費率 60 3,600÷6,000

 

 

つぎに公式をつかって、損益分岐点売上高をもとめます。

 1,600÷(1-0.6)=4,000

損益分岐点売上高は、4,000円となります。

 

B社は、4,000円の売上高があれば、収支トントンの「利益ゼロ」になることがわかります。

検算してみましょう。

 

B社の損益分岐点売上高   (単位:百万円)

売上      4,000

仕入※     2,400

固定費     1,600

利益          0

 

    仕入高は、変動費です。つまり、売上高に比例します。

変動費率は60%ですから、売上高4,000円に比例する仕入高は[4,000×60%=2,400]となります。初学者は間違いやすいので要注意です。

 

このように損益分岐点を知ることで、どのくらい売れば、利益が出るのか、がわかります。人件費を労働分配率で考える

 

 

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